この小屋には時計がないから、すっかり時間の感覚が失われていたみたいだ。


「今日は特別に武を連れてきてあげたよ」


千恵美の後ろから、顔が腫れあがった武が姿を見せた。


「武!!」


すぐに駆け寄りたかったけれど、それは叶わなかった。


武は千恵美をジッと見つめて、ほほ笑んでいるばかりだ。


「武はけが人だよ? 安静にしておかないとダメじゃん!」


武へ向けて声をかけても、武にはあたしの言葉が届いていない様子だ。


代わりに、千恵美が「もう大丈夫だって言ってたよ」と、返事をした。


「大丈夫ってどこが? 怪我だらけじゃん!」


「本人がいいって言ってるんだから、ほっとけばいいでしょ」


千恵美は呆れ顔になる、


「傷からばい菌が入ったら大変なことになるよ? 下手したら病気になっちゃうのに!」


焦ってそう言っていると、不意に武があたしへ視線を向けた。


ここへ来て始めてあたしの存在に気がついたように目を丸くしている。