考えることが沢山あるのに、今のあたしには何もできなかった。


父親のことも気になるし、千恵美がなにを考えているのかも気になる。


そして何より、武がどうしているのかが気がかりだった。


あれほど暴行されているのだから、今日は寝込んでいると思うけれど……。


痛々しい武の姿を思い出すと涙が出て来た。


あたしのことをちゃんと好きになってくれていれば、あんなことにもならなかったのに……。


そう思っていた時、足音が近づいてきていることに気が付いて顔をあげた。


すぐに窓のへとにじり寄って外を確認する。


しかし、外には秘儀が広がっているばかりで人の様子は見えなかった。


でも、足音は止まらず、真っ直ぐにこちらへ近づいてきているのだ、


あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。


もしかして父親だろうか?


だとしたら、今度は声を出して助けてもらおう。


昨晩は驚きすぎてつい声を殺してしまったけれど、あたしだって今は死ぬか生きるかの瀬戸際なのだから、なりふりかまっていられない。