武の口を塞いだガムテープは元々剝がれかけていたのだろう、今は床に落ちていた。


「なんだ、起きたんだ」


千恵美は武を見つめてフンッと鼻を鳴らす。


武のことなんてどうでもいい様子だ。


すぐにあたしに向き直ってしまった。


その手には相変わらずカッターナイフが握られている。


「武、助けて!」


千恵美は一歩一歩あたしに近づいてくる。


どうにか逃げようとしても、ミノ虫状では出口までは遠すぎる。


「千恵美。俺はお前を犯罪者にしたくない」


武が千恵美に話しかけているけれど、その言葉は千恵美には届かない。


あたしは必死に身をよじって少しでも千恵美から遠ざかった。


あんなもので顔面を傷つけられたら、死んでしまうかもしれない。


「あたしはまだ……死にたくない!」


思わず叫んだ時だった、千恵美が何かを思い出したように立ち止まったのだ。