気を引き締めつつ、昼食はレストランで美味しくいただいて。お腹が満たされたあとは、資料館となっている二階の大広間や、廊下で繋がった和館を見学させてもらったが、風雅さに終始うっとりとしたため息をついていたのだった。


「茶室も気品があって、やっぱりうちとは違ったな……」


月曜日の午前九時、私はひとりリビングダイニングで煎茶を淹れながら、昨日のことを思い出していた。

和館にあった綺麗な茶室からは美しい日本庭園が見えて、とても素敵だった。あの場所でお茶を淹れたら、なおさら美味しくいただけそう。

その日を心待ちにしているが、とりあえず今日は残りの荷物の片づけと洗濯が、周さんに言い渡された私の仕事だ。

彼は、私がなんとか早起きして作った朝食を食べて出ていった。綺麗に平らげてくれたことを思い返すと、自然に笑みがこぼれる。

昨夜の夕食も私が作ったのだが、煮物やおひたしなどの田舎料理ばかりで、素朴なそれらを見た周さんは、無表情で『茶色い……』とひとこと呟いていた。

高級志向の御曹司様だもの、きっとおばあちゃんの食卓みたいな光景は見慣れないだろう。