『すごい、大正時代にタイムスリップしたみたい……!』

『その感覚を味わってもらうのが目的だからな』


感動する私に周さんが言った通り、提供しているメニューもコロッケやカレーライスなど、当時の食事を再現している。

こんなに素敵な場所で働けるなんて、テンションが上がる。煎茶道を行うときは着物だが、給仕として働くときは私も袴を着られるし、めちゃくちゃ嬉しい。

それはさておき、重要なのは人間関係だ。給仕係は四十代くらいの女性が多く、てきぱきと動いていて仕事ができる人たちであることはすぐにわかった。

席も一杯で忙しそうだったため挨拶は軽く済ませたが、皆さんにこやかに『これからよろしくね』と返してくれた。

ただ、なんとなく目が笑っていない感じがしたのだが、きっと気のせい……だと思いたい。

私が周さんの婚約者であることは周知しているらしいが、彼がいくらハイスペックな男性であっても、さすがにおばさま方が狙っているなんてことはないだろうし。

でも、よそ者がやってくることに対して煙たがる気持ちだったり、警戒心だったりがあるのかもしれない。もしそうだとしたら、これからの頑張りで認めてもらわなければ。