見習い夫婦～エリート御曹司と交際0日で妊活はじめます～

「本当ですか!?　ありがとうございます……！」


嘘、そんなに気に入ってもらえたなんて。驚きつつも素直に嬉しく、ぱあっと顔を輝かせてお礼を言った。

スーパーや茶屋で売られている多くの日本茶は、複数の産地や農家の茶葉をブレンドしているが、私たちは泰永茶園で生産した茶葉だけを使って作っているのだ。

農園の個性を存分に出した、こだわりのある茶を褒めてもらえるのは、嬉しいことこの上ない。

喜んだのもつかの間、一柳さんはやはり表情を変えずに、痛いところを突いてくる。


「だが、君たちのような単一農園は継承していくのが難しいだろう。農家が徐々に減っていっていると、その辺りの話も泰永さんから聞いたよ」


家族経営の茶農家の現状は彼の言う通りで、私はテンションと目線を下げ、「はい……」と頷いた。

私たちのように、生産から販売まで一軒の農家が行っているところは全国でも数少ない。労働人数や工場の機械投資、経営力など、いろいろな事情で今後も減っていく傾向にあるらしい。

わが家は兄と弟がいるので、跡取りに関しては問題なさそうだが、資金面では少々心許ない状態だ。販売できる量も少ないので、私たちの農園茶の存在を知らない人も多いし。