「昨日は話の途中で帰してしまってゴメンね。ほら、愛美も美空ちゃんに謝って。迷惑かけたんだから」


伊勢谷先輩が折原先輩を促すように、背中をポンと軽く叩く。


あたしを睨みつけていた折原先輩が、目と口の形をむりやり三日月型に変形させて謝罪した。


「キノウは、ホントうに、ゴメンナサイねェ」


うわぁ。謝る気ゼロな本音がヒシヒシと伝わってくる、ぎこちない発音ですこと。


「よしよし。これで仲直りだね! みんなにも紹介するよ。この子は一年生の佐伯美空ちゃん。俺のお弁当を作ってくれる子なんだ。かわいい子だろ?」


そう言って先輩があたしの肩をグッと抱き寄せたとたん、ファングループから強烈な冷圧がドォッと押し寄せてきた。


マジで鳥肌が立っちゃって、思わずブルッと身震いしたら、伊勢谷先輩が怪訝そうな顔をする。


「あれ? どうしたの? 震えてるけど寒い?」


「あ、は、はい。ちょっと、季節外れの冷気を感じて……」


「風邪のひき始めかな? そういうときは葛根湯(かっこんとう)が効くんだよ。お大事にしてね」