胸を熱くして先輩を見上げたら、いつもの強い印象の瞳がずいぶん穏やかで、口元もふんわり緩んでいる。


「昨日と今日のこと、改めて謝るよ。済まなかったな、チビ」


……また、チビって呼んだ。


でも、なんでだか怒る気になれない。


もう呼ばれ慣れちゃったから?


それとも、先輩がこんな穏やかなトーンで話すのを、初めて聞いたからかな?


「またな」


エレベーターの扉が閉まって、近藤先輩の姿が見えなくなった。


すぐに単調な機械音がして、個室がゆっくりと下の階へ移動する。


その間あたしはボーッとしたまま、目の前の扉をずっと見ていた。


なんだか夢でも見てた気分。


でも、扉が閉まる瞬間に見た近藤先輩の微笑みは、夢じゃない。


あたしに向けてくれたあの綺麗な微笑みと優しい言葉は、夢じゃないんだ……。