期間限定『ウソ恋ごっこ』

昼休みで人通りの多い廊下を、周りの迷惑おかまいなしに全力疾走するあたしを、ほかの生徒たちがビックリして避けている。


息を切らせて四階まで階段を駆け上がり、フラフラしながら教室に戻った。


入り口のドアに掴まってハアハア呼吸を整えていたら、席に座って文庫本を読んでいる真央ちゃんの後ろ姿が見えて、気が緩んだのか目に涙がにじんできた。


「ま……真央ちゃあぁん!」


「わ!? どうしたの!?」


あたしは真央ちゃんの背後から飛びついて、「真央ちゃん、真央ちゃん!」と繰り返しながらグスグス鼻をすする。


「美空、落ち着いて。とにかくイスに座って」


イスに座らせてもらったあたしは、中庭での出来事を、最初から最後までひとつ残らず小声で吐き出した。


だって学園のアイドルに胸をタッチされたなんてスキャンダル、とても大きな声じゃ話せない。


あたしの口元に耳を寄せて、真剣な顔でふんふんと聞いていた真央ちゃんが、目を丸くして大きな声を上げた。


「えぇ⁉︎ 近藤先輩に胸を揉まれたあ!?」


「ちょ、声が大きいよ!」