期間限定『ウソ恋ごっこ』

少しずつ近づかれるごとに追い詰められている気がして、ソファーの背もたれにピタリと背中をくっつけた。


先輩は、怯えるあたしの目の前に来て、指先であたしのアゴを持ち上げる。


「人を裏切って傷つけておいて、自分だけ無傷で済むと思ってた? 同等に傷ついてもらうよ。彬にもキミにも」


先輩の親指があたしの唇をゆっくりと撫でる。唇に感じる生暖かい体温が怖くて、身動きひとつできない。


「今からキミをもらうよ。美空ちゃん」


心臓が恐ろしいほどバクバク鳴って危険を訴えているけれど、まるで呪文にかけられたみたいに体が動かなかった。


子犬みたいに震えながら先輩の顔を見上げていると、先輩の手があたしのブレザーのボタンを、上からひとつ、またひとつ外していく。


ここまで危機的状況が迫っているのに、まだ状況を信じきれない。


接触する寸前まで近づいた唇に先輩の吐息を感じて、ようやく全身が跳ねるようにビクリと震えた。


……嫌だ。こんなの嫌だ。


お父さん、お母さん。真央ちゃん。


怖い。怖い。怖いよ。


なにも考えられない。頭の中真っ白。全身が硬直して指一本動かない。