期間限定『ウソ恋ごっこ』

その様子を黙って見ていた真央ちゃんが、あたしに話しかけてきた。


「近藤先輩、行っちゃったね……って、美空!? めっちゃ泣いてる!?」


あたしは顔をクシャクシャにして、声を殺して泣いていた。胸が張り裂けそうにいっぱいで、泣き声すら出てこない。


息を吸っても吸っても、吸ったそばからぜんぶ激情になって吐き出されてしまって、体中が焼けるみたいに苦しかった。


「真央、真央ちゃ……」


「大丈夫!? 可哀そうに、いきなり近藤先輩を見たからショックだったんだね!」


「違うの。先輩ね、言って、くれたの」


あたしは自分の中に残った息を振り絞り、切れ切れの声で伝えた。


「あたしの、名前、呼んでくれたの……」


さっき先輩が青空を見上げてつぶやいた唇の形は、『美空』。


声が聞こえたわけじゃないけど、なぜかあたしはそう確信できたんだ。


佐伯じゃなく、美空って呼んでくれた。ふたりで過ごしたあの頃の呼び方で。


あの宝物のような特別だった時間を、近藤先輩は捨て去っていなかった。