期間限定『ウソ恋ごっこ』

嫌だ。嫌だ。この赤い色は、嫌。


こんなの嫌。こんなもの見たくない!


神様、仏様、誰でもいいからお願い助けて! なんでもするから、なんでも言うこと聞くから近藤先輩を助けて!


この赤い物を、今すぐあたしの目の前から消し去ってー!


「チビ、落ち着け。騒ぐな」


完全にパニックになっているあたしに、近藤先輩が静かに話しかけてきた。


先輩は眉を寄せて、少し険しい表情をしている。たぶん傷の痛みに耐えているんだろう。


「せ、先輩! しっかりして!」


「俺はしっかりしてるから騒ぐなって」


「だって、だってナイフで切りつけられたのに!」


「ナイフじゃない。よく見ろよ」


冷静な先輩の視線の先には、床にペタンと座り込んだ折原先輩がいた。


目は虚ろで口をポカンと開け、首をカクンと傾げている様子は、明らかに正常な状態じゃない。


伊勢谷先輩が折原先輩の肩を必死に揺さぶっていて、ガクンガクン揺れる折原先輩が両手で握りしめているのは、たしかにナイフじゃなくて……。


「あれはフォークだよ。とっさのことだったから完全に避けることはできなかったけど、ある程度はガードできた。だからそんな大げさに騒ぐな」