期間限定『ウソ恋ごっこ』

トロトロしていた卵液の表面が、あっという間にふんわりし始める。


「そろそろだな。形を整えるぞ」


ついに来た。最後の難関。


前にやったらアメーバーになっちゃったんだよなぁ。最後の大詰めで失敗したら泣くに泣けない。


「先輩。あたし自信ありません」


「俺がサポートするから大丈夫だ」


近藤先輩があたしの背後に周り、後ろからそっと両腕を回してあたしの両手を掴んだ。


その瞬間、ボボッと火がついたようにあたしの顔が熱くなる。


先輩の手から伝わる体温が、あたしの中に入り込んだせいだ。まるでバックハグみたいに背後にピッタリ密着されて、意識が背中と両手に分散しちゃう。


「こう、フライパンを向こう側へ傾けて。それから軽く前後に引いて」


耳元で静かにささやかれて全身がビリビリしびれた。先輩の低音ボイスから発せられる無意識なセクシーパワーがすごい。


頭からつま先までカーッと熱くなって力が抜ける。


体中の毛穴という毛穴から湯気が出そうなほど火照りながら、どうにか先輩の力を借りてオムレツの形に折りたたんだ。