そう言って先輩がレジ袋から取り出したのは、これと言って特徴のない、パック入りの白い卵だった。
これが、豪華重箱弁当と戦うあたしの武器なの?
しかもオムレツにはトラウマがある。なにしろあたしは、卵からヒヨコじゃなくてアメーバーを生み出しちゃった実績の持ち主だ。
「あたし、自信ないんですけど……」
「大丈夫。俺がついてる。俺を信じろ」
近藤先輩の黒い瞳に見つめられて、あたしの心臓がトクンと波打った。
先輩と目が合うだけで胸の奥が苦しくなるような、勝手に体温が上昇するこの感情は、純粋な『好き』の気持ち。
先輩の姿に、声に、言葉に、否応なく『この人が好きなんだ』と思い知らされる。
好きなんだよ。本当に、自分でもどうにもできないんだよ……。
「美空ちゃん、遅くなってゴメン!」
とつぜんドアから伊勢谷先輩が飛び込んできて、あたしの思考は中断した。
夢に浸っていたような気持ちが、一気に現実に引き戻される。
「家庭科の先生がなかなか見つからなくてさ、しかも交渉が難航して……。ん? その卵、なに?」
「司、延期の件はもう心配しなくていい。俺たちはこれからオムレツを作るから、そこで座って見ててくれ」
近藤先輩にそう言われて、伊勢谷先輩が卵やバターを交互に見てポカンとする。
そして、よく聞き取れないほど小さな声で「……俺たちって?」とつぶやいた。
これが、豪華重箱弁当と戦うあたしの武器なの?
しかもオムレツにはトラウマがある。なにしろあたしは、卵からヒヨコじゃなくてアメーバーを生み出しちゃった実績の持ち主だ。
「あたし、自信ないんですけど……」
「大丈夫。俺がついてる。俺を信じろ」
近藤先輩の黒い瞳に見つめられて、あたしの心臓がトクンと波打った。
先輩と目が合うだけで胸の奥が苦しくなるような、勝手に体温が上昇するこの感情は、純粋な『好き』の気持ち。
先輩の姿に、声に、言葉に、否応なく『この人が好きなんだ』と思い知らされる。
好きなんだよ。本当に、自分でもどうにもできないんだよ……。
「美空ちゃん、遅くなってゴメン!」
とつぜんドアから伊勢谷先輩が飛び込んできて、あたしの思考は中断した。
夢に浸っていたような気持ちが、一気に現実に引き戻される。
「家庭科の先生がなかなか見つからなくてさ、しかも交渉が難航して……。ん? その卵、なに?」
「司、延期の件はもう心配しなくていい。俺たちはこれからオムレツを作るから、そこで座って見ててくれ」
近藤先輩にそう言われて、伊勢谷先輩が卵やバターを交互に見てポカンとする。
そして、よく聞き取れないほど小さな声で「……俺たちって?」とつぶやいた。


