期間限定『ウソ恋ごっこ』

そういえば伊勢谷S P軍団がどこにもいない。


意外だな。てっきり甲子園みたいにブラスバンドでも引き連れて、数の力で圧をかけてくるかと思ってた。


こちらとしては大勢の前で恥をかく心配がなくなったから、ありがたいけど。


「おい。こんなところで火花を散らしてるヒマがあるなら、さっさと調理を始めろ」


折原先輩と真央ちゃんがバチバチ睨み合ってると、近藤先輩が間に割って入った。


「佐伯、早くエプロンを着けて手を洗え。その間に司は、冷蔵庫から佐伯の食材を運んできてやれよ」


テキパキと指示を出す近藤先輩に、伊勢谷先輩がキョトンとする。


「ないよ?」


「あ? なにがないって?」


「美空ちゃんの食材、ないよ?」


言われたあたしはポカンとした。食材がない? どういうこと?


同じようにポカンとした近藤先輩が、あたしに聞いてくる。


「おい、佐伯。食材はどこに置いたんだ?」


「今朝登校してすぐに冷蔵庫の中に入れておきましたけど」


口ごもりながら答えると、伊勢谷先輩がプルプルと首を横に振った。


「さっき冷蔵庫の中を見たけどカラッポだったよ?」


「そんなはずないです。あたしはちゃんと入れました」


「でも、ないんだよ。見てみる?」


あたしたちはぞろぞろと冷蔵庫前に集まった。ドアを開けてみたら本当にカラッポ。中にはなーんにもない。