「遅かったな。佐伯」
あたしは一瞬息をのんで、近藤先輩の顔を凝視した。
先輩があたしのことを『佐伯』って名字で呼んだ。つい昨日まで優しく『美空』と呼んでくれていたのが、まるで夢だったかのように。
……そうだ、これが現実なんだ。先輩のあの表情を見れば、あの淡々とした声を聞けばわかる。
『俺とお前のウソ恋ごっこはもう終わった』
まだ恋心を捨てられずにいるあたしに、そう念を押しているんだね。
あなたはもう完全に吹っ切れたのに、あたしひとりが、いまもこうして前に進めずに悲しんでいるんだ。
「あ……はい。えっと……」
なにかしゃべらないと不自然に思われる。だけど口を開くと泣き出しそうで言葉が出てこない。
なんとか視線を逸らして気を紛らわせようとしたけれど、どんどん視界が緩んできた。
どうしよう。ここで泣いたら完全にアウトだ。でも今にも涙があふれそう。どうしよう、どうしよう……。
「あーら、佐伯さん。やっと来たのぉ? あんまり遅いから、てっきり尻尾を巻いて逃げ出したかと思ったわあ」
あたしは一瞬息をのんで、近藤先輩の顔を凝視した。
先輩があたしのことを『佐伯』って名字で呼んだ。つい昨日まで優しく『美空』と呼んでくれていたのが、まるで夢だったかのように。
……そうだ、これが現実なんだ。先輩のあの表情を見れば、あの淡々とした声を聞けばわかる。
『俺とお前のウソ恋ごっこはもう終わった』
まだ恋心を捨てられずにいるあたしに、そう念を押しているんだね。
あなたはもう完全に吹っ切れたのに、あたしひとりが、いまもこうして前に進めずに悲しんでいるんだ。
「あ……はい。えっと……」
なにかしゃべらないと不自然に思われる。だけど口を開くと泣き出しそうで言葉が出てこない。
なんとか視線を逸らして気を紛らわせようとしたけれど、どんどん視界が緩んできた。
どうしよう。ここで泣いたら完全にアウトだ。でも今にも涙があふれそう。どうしよう、どうしよう……。
「あーら、佐伯さん。やっと来たのぉ? あんまり遅いから、てっきり尻尾を巻いて逃げ出したかと思ったわあ」


