期間限定『ウソ恋ごっこ』

「美空」


怖気づいているのに気がついた真央ちゃんが、ドアを開けるように促した。


そうだ。いつまでもここで突っ立ってるわけにはいかない。


あたしはドクドク騒ぐ胸を片手で押さえ、何度も深呼吸してから、えいっ!と歯を食いしばってドアを開けた。


そして中に一歩踏み込み……その場でまた棒立ちになった。


近藤先輩が、そこにいる。制服のズボンのポケットに手を突っ込んで、あたしの目の前に立って、伊勢谷先輩と立ち話している。


もうそれだけで、切なさと寂しさで心がいっぱいになって、その場に崩れ落ちそうになった。


よく『目の前が真っ白になる』って言葉を使うけど、あれ、本当だ。


いまのあたしには近藤先輩しか見えない。先輩以外のものは見えていても脳が認識しない。


ただ真っ白な世界の中に、近藤先輩の姿だけが浮かんでいる。


きっとこれがあたしの本心。望みなんだろう。


ほかの何物にも(とら)われずに、近藤先輩だけを見ていたい。そう強く思う心が、この白い背景を生み出しているんだ。


ねえ、近藤先輩、気づいて。


あたし、ここにいるよ……。