期間限定『ウソ恋ごっこ』

もう本当にダメ。心臓破裂する。息をするだけで精いっぱい。


このまま先輩にキスされちゃうの? でも先輩になら、あたしのファーストキスを捧げても絶対に後悔なんてしない。


だってあたし、先輩のことがこんなに好きなんだもの。


「……いや、だめだ。これは『ウソの恋人ごっこ』なんだ」


あたしが目を閉じようとした瞬間に、先輩が自分に言い聞かせるように言って、一歩後ろに下がった。


ふたりの間に生まれた距離に、浮かれていたあたしの思考が一瞬で現実に戻る。


全身を支配していた甘い期待と興奮が、潮が引くように冷めていって、ちょっぴり泣きそうになった。


そうだった。これはウソ。心の中の線引きを忘れちゃいけない。


好きという言葉すら封印しているのに、キスなんて絶対にしちゃいけないんだよ。


たとえお互いが求めているとしても。


「すまん。理性を失いかけた」


先輩が両手で顔を覆って、それから気合を入れるように自分の両頬を何度もバシバシ叩く。


それって、本当はあたしにキスしたかったってことだよね?


その気持ちだけでうれしい。それだけで満足しなきゃいけない。


あたしは寂しい気持ちを無理やり心の奥の方へ押しやりながら、意識して元気な声を出した。