期間限定『ウソ恋ごっこ』

真面目な顔をして『ウソ』という言葉を強調する先輩の顔をじっと見ながら、あたしはようやく先輩が言いたいことを理解できた。


近藤先輩は、伊勢谷先輩を裏切りたくない。でも、どうにかしてあたしの願いも叶えてやりたい。


その相反するふたつの事柄の、折り合いをつけようとしているんだ。


これはただのおふざけ。ウソ。決して本当のことじゃない。


その証として、『好き』という言葉をわざと封印して自分たちの心に境界線を引き、ケジメをつける。


……わかったよ、先輩。それが必要なら、それでかまわない。


あなたとほんの少しの時間でも恋人同士でいられるのなら、それくらい大したことないよ。


「わかりました」


うなずくあたしを見て、先輩の表情から硬さが薄れた。


ほっとしたように肩を落として、それから自分の口元に手を当てて自虐(じぎゃく)的な声を出した。


「弱いな、俺は」


「え?」


「お前のことはきっぱり諦めたつもりなのに、こんなに簡単に気持ちが揺らぐなんて。まさか自分がこれほど情けない男だとは思わなかったから、だいぶ驚いている」


そして、ほんの少し苦笑いをした。


「お前のおかげで、これまで知らなかった自分を知ったし、初めての気持ちも知った。いったいなんなんだ? お前って存在は」


あたしの胸がキュンと甘酸っぱい音を立てた。