期間限定『ウソ恋ごっこ』

「そんな中、クラスでひとりだけ、まーったく俺に興味を示さない男がいたんだ」


「それが近藤先輩ですか?」


「そう。彬だよ」


伊勢谷先輩は、うれしそうにうなずいた。


「彬だけはちっとも俺に接触してこないの。もしかして嫌われてんのかな?って思ったけど、用事があって話すときはぜんぜん普通だったし。なんで無視されてんのか不思議だったなぁ」


「無視したわけじゃねえって。俺はほかの連中みたいに、お前に関して騒ぎ立てるような理由がなかっただけだよ」


近藤先輩が渋い顔で反論すると、伊勢谷先輩は「わかってるって」と近藤先輩の肩をポンポン叩いた。


「でもそれが俺には心地よかった。本当に必要なときだけそばに来て、用が終われば去っていく。そんなあたり前の、裏表のない態度がなんだか安心できたんだ」


裏表のない態度って聞いて、あたしはすぐに真央ちゃんを連想した。


真央ちゃんの行動は一貫して自分の心に素直で真っ正直だ。たまに度が過ぎることはあるけど。