不安で目が泳いでいるあたしの様子を見て、近藤先輩も少し考え込んでいたけれど、すぐに意を決したように宣言する。


「悩んでいてもしかたない。予定よりもレベルアップを早めるぞ。今日もいつも通り放課後に俺の家へ来い。特訓だ!」


「は、はい! よろしくお願いします!」


先輩のキリッとした表情と語気につられて、威勢よく返事をした。


でも、おかげでなんだか元気が出てきた。


そうだよね。先輩の言う通り。悩んでるヒマがあるなら、出来ることをやらなきゃ。


そうすればなにか道が開けるかもしれない。これまでだってドン底から起死回生してきたんだもんね。


次もきっとなんとかなるさ! 根拠のない思い込みだけど、なによりも気持ちで負けるのが一番いけない。


よっしゃ、とりあえず頑張るぞー!


「ねえ、美空」


小さくガッツポーズを決めて気合を入れていると、真央ちゃんが妙に真面目な顔で話しかけてきた。


「なに? 真央ちゃん」


「どういうこと?」


「なにが?」


「いつも通り近藤先輩の家で特訓って、どういうこと?」


「……!」


石化の呪文にかかったように、頭が一瞬で真っ白になった。


ヤバい。やっちまったー!


彫像みたいに硬直しているあたしに、真央ちゃんは無表情でグイグイ詰め寄ってくる。


「叔母さんに料理教えてもらってるんじゃなかったの? どういうこと?」


「えっ、とぉ。それ、は」


「ど、う、い、う、こ、と?」


真央ちゃんの強烈な目力が、マジで怖い。


青ざめながらジリジリ後退するあたしを見て、近藤先輩が「なんだ。まだ内緒だったのか」って言いながら頭を掻く。


そのしれっとした態度を横目で見ながら、あたしは半ベソ状態だった。


あぁ、もう! やっぱり今年の星回りは絶対、大殺界だー!