「で、どう? 叔母さんはちゃんと教えてくれてるの?」


真央ちゃんに聞かれて、あたしはうなずいた。


真央ちゃんには、『近所に住んでる親戚の叔母さんに頼み込んで、料理を教えてもらっている』と伝えてある。


嘘も方便ってよく言うけど、嘘は嘘に変わりないわけで。真央ちゃんとの会話でレッスンのことが話題になるたびに胸がチクチク痛んだ。


「ちゃんと教えてはくれるけど、叔母さんてすごく料理が上手だから、あたしのレベルの低さが相当ショックみたい。よく絶望して(ひざ)から崩れ落ちてる」


「そんなんで大丈夫なの?」


「自分ではけっこう順調にレベルアップしていると思ってるから大丈夫」


「順調なレベルアップねぇ。イモの皮剥きで筋肉痛になってるのに?」


からかい声の真央ちゃんに、あたしは頬を膨らませた。


「しかたないじゃん。初心者なんだから」


現段階では、あたしはまだ包丁を握るまでには至っていない。昨日のイモの皮剥きだって、安全面を考慮してピーラーでの初挑戦だった。


ただ、慣れていないことをしたせいで、必要以上に肩に力が入っちゃって。


ジャガイモ六個分を皮剥きするのに四十分の時間がかかり、結果として腕がひどい筋肉痛になってしまった。