すると先輩は、おどけた口調で「よろしい」と言いながら、あたしのオデコに軽くデコピンした。


「いたっ」


反射的にそう口にしたけど、本当はぜんぜん痛くなんかない。


でも、先輩がこんなおふざけ行為をしてくれたことがうれしいような、照れくさいような。


だからわざとヘソを曲げた顔をして、バレないようにごまかした。


「ハハハ、悪い悪い。さあ、送るよ」


それから帰り支度を整え、ふたり一緒に自転車をこいで、あたしの自宅まで夜道を帰った。


途中、先輩との会話が弾みまくって盛り上がるのなんの。


特に学園に伝わる怪談話を、先輩が臨場感たっぷりに教えてくれたときは、周囲の暗さも手伝って怖くて叫びっぱなし。


「夜の第二体育館にはなにがあっても近づくなよ? もしも声が聞こえても絶対に返事をするな。返事をしたら最後、お前は床に引きずり込まれて……」


「きゃー! 返事しませんしません全力でガン無視しますー!」


あたしがキャーキャー騒ぐと、先輩は逆におもしろがってますます怪談話に熱がこもる。