心の中で自分にツッコミまくっていたら、ふとキッチンの壁掛け時計が視界に入った。


「あ、そろそろ九時ですね。あたしもう帰らなきゃ」


なんとなくホッとしながらそう言うと、先輩が「家まで送るよ」と言い出して、あたしはまた慌てた。


「大丈夫ですよ。自転車だし」


「だめだ。ちゃんと家まで送る」


「でも……」


「いいから言うこと聞け。こんな暗くなってから女の子をひとりで帰すなんて、できるわけないだろ」


真剣な顔して言われて、言葉に詰まる。


イ、イケメンから丁重にレディ扱いされるのって、単純にテンション上がっちゃうんですが。


「断られても俺は勝手に後ろからついて行くからな」


「それではまるでストーカー……」


「おう。俺だって勘違いされて職質なんか受けたくねえよ。だから、おとなしく送らせろ。わかったな?」


命令口調だけど、嫌じゃない。


だって本気で心配してくれているのが、ありありと伝わってくるから。


だからあたしは、なんだか引き寄せられるようにコクンとうなずいていた。