期間限定『ウソ恋ごっこ』

偶然なわけあるかー！　絶対、わざとでしょ！


って叫ぶ声すら出てこないほど痛くて、うめき声を我慢するので精いっぱい。


まさかこんなダイレクトな嫌がらせをしてくるなんて。


もっと折原先輩っぽい、裏から手を回すようなネチッこい攻撃を予想してたのに。


ノロノロ起き上がろうとするあたしの姿を、廊下にいた生徒たちが、強張った表情で見つめている。


そうか。これはきっと、伊勢谷先輩に近づこうとする他の女の子たちへの見せしめもかねているんだ。


「佐伯さん、本当にごめんなさいねぇ。わざとじゃないんだし、ちゃんと謝ったんだから許してくれるわよねぇ？　じゃ、あたし急いでいるからこれで失礼～」


わざとらしく丁寧に頭を下げた折原先輩がクルリと踵(きびす)を返した。


そして、まるでスキップするみたいな軽やかな足取りで遠ざかっていく。


なんとか上体を起こしたあたしは、悔しさにグッと唇を噛みしめながら、揺れる巻き髪に覆われた背中を見送っていた。