期間限定『ウソ恋ごっこ』

両手から放り出された教科書がバサバサ散乱する音と、床に落ちた缶のペンケースから中身が飛び出す音が派手に響く。


「美空!?」


真央ちゃんの大声が聞こえたけれど、腕とか足とか、全身のあちこちが痛くて動けない。


あたしは歯を食いしばってひたすら痛みに耐え、床の冷たさと、周りの人たちが驚いて息をのんでいる空気を感じていた。


「あらやだ! 大丈夫!?」


反射的に顔を上げたら、あたしを見下ろすように立つ折原先輩の姿が見えた。


長いまつ毛に縁どられた両目が、嫌な形にニンマリと細められている。


「あたしの足が偶然、本当に本当に偶然、佐伯さんの足に絡まっちゃったのよ。ごめんなさいねぇ」