君への愛は嘘で紡ぐ

「だろうな」


笠木さんは間を開けずに言った。


「わかっていたのですか……?」
「あー……まあ、な」


笠木さんは目を泳がせる。
理由を言うには、私の家の事情に触れてしまう、ということだろう。


「ていうか、私の質問に答えてくれない?」


私と笠木さんの間に立っている瑞希さんは、笠木さんを睨んでいる。


「見たらわかるだろ。バイトしてんだよ」


言われてみると、白いシャツに黒い腰エプロンはほかの店員さんと同じ格好だ。


「校則違……」


笠木さんは瑞希さんの口を塞ぐ。


途中までしか聞き取れなかったけれど、瑞希さんが言おうとしたことはなんとなくわかる。


校則違反と周りに知られてしまうのは、都合が悪いだろう。
だから、口を塞いだ。


少しすると、笠木さんは瑞希さんから手を離す。


「金が必要なんだから、仕方ないだろ。バレないように遠くにしたってのに、なんでお前ら」
「ここ、最近話題になってるから……私たち以外の生徒が来る可能性、あるかもしれない……」


この喫茶店に行きたいと言ったのは由実さんのため、由実さんは怯えながら笠木さんに教えた。
笠木さんが大きく息を吐くと、由実さんは肩をびくつかせる。


「……めんどくせえ」