「狭くて何もない部屋ですが、どうぞ」


一階の左から二番目のドアを開け、そう言った。


「お邪魔します」


靴を脱ぎ、足を踏み入れる。
人の家というだけでも緊張するのに、玲生さんが暮らしている場所だと思うと、さらに緊張してしまう。


希実さんは狭いと言うが、そんなふうには感じない。


「片付ける時間もなくて、汚いでしょ?」


部屋を見渡していたら、希実さんが自虐的に笑った。


「いえ、綺麗ですよ」


物は少なく、きちんと棚にしまってある。
目立った埃もない。


ローテーブルの上が少し散らかっているのも、生活感があるくらいで、あまり気にならない。


「円香ちゃん、その袋こっちに持ってきてくれる?」


台所から呼ばれ、袋を持っていく。


今から使う材料と使わないものをわけている。


「よし。作ろうか」


手を洗い、希実さんの指示を待つ。


「人参と玉ねぎの皮むきをお願いしようかな」


それは野菜炒めを作るときと同じ作業で、戸惑うことなく作業を進めた。


私が野菜を切っている間、希実さんはフライパンに多めの油を引いた。
焼きそばの麺を広げると、もう一つのコンロにフライパンを置く。


肉を焼き、人参を炒める。