そして私たちは病院から徒歩三分程度のところにあるスーパーに着いた。


希実さんは入ってすぐ、積み重ねられた一番上にあるカゴを取った。
私は初めて訪れる場所で、希実さんの少し後ろを歩く。


「円香ちゃんには、玲生の好物を伝授するからね」


食品を見て、カゴに入れていく。


「玲生が退院したとき、振る舞いたいでしょう?」


小さく首を縦に振る。


ただ料理を作るだけでなく、玲生さんが好きなものを作ることができれば、さらに玲生さんの喜ぶ顔を見れる。


そう思うと、やる気が出てくる。


「玲生さんが好きなものというのは?」
「あんかけ焼きそば」


聞いたことのない料理名に、首を捻る。


「意外と簡単に作れるんだよ」


私がわからないでいるうちに買う物をカゴに入れ終えたのか、希実さんはレジに向かう。


支払いを終えると、商品をレジ袋に入れていく。


「私も持ちますよ」
「本当?無理しないでね」


希実さんが渡してくれたのは、軽そうな袋のほうだった。
それでも結構重くて、重力に逆らえないというように、腕が伸びた。


一部始終を見ていた希実さんは、微笑んでいる。


「ゆっくり帰ろうね」


スーパーに来るまでの速さより少し落として歩き、アパートに着いた。