希実さんはさらに考え込んでしまった。


「うちってそんなに狭かったっけ?物もないほうだと思ってたんだけど」
「円香はちゃんの家に比べたら、絶対に狭いよ」
「いや、そこと比べるなよ」


玲生さんは即座に言い返すが、希実さんは頬を膨らませている。


「だって、家が狭いからやっぱり暮らせませんなんて言われたくないもん」


拗ねた表情、理由が幼気で玲生さんに似ていて、笑みがこぼれる。


「円香はそんなこと言うやつじゃないから」


希実さんは確かめるように私を見てくる。


「はい、言いません」


みるみる笑顔になっていく。
希実さんの表情変化は、まるで子供のようだ。


「私、娘と料理するのが夢だったの。一緒にいっぱいご飯作ろうね」
「はい」


奈子さんと料理の練習をするのも楽しかったが、希実さんとは母娘として料理ができると思うと、心が踊る。


「よろしくお願いします」


椅子に座ったまま頭を下げるのは嫌で、立ち上がって礼を言った。


希実さんは私と腕を組んだ。


「じゃあ、早速一緒に帰ろう」


この行動の速さには玲生さんも驚いている。


「なんで」


玲生さんは不満をあらわにする。


「玲生が退院してからだと、遅いから」