君への愛は嘘で紡ぐ

希実さんは私のほうに来て、両肩を掴む。


「円香ちゃん、本当?」
「は、はい」


希実さんの勢いに圧倒されながら言う。
だけど、よく見れば希実さんの目には薄らと涙が浮かんでいた。


希実さんはそのまま私を抱きしめた。


「ありがとう、円香ちゃん」


玲生さんには聞こえないように、私の耳元で囁いた。
私から離れた希実さんは、優しく微笑んでいる。


「ちょっと、なんで母さんのほうが円香との距離が近いわけ?」


玲生さんを見ると、頬を膨らませていた。


それが可愛らしくて、吹き出しそうになったのを堪える。


「私だって、円香ちゃんのことが好きだもん」


希実さんは玲生さんに見せつけるように、もう一度私を抱きしめる。


さらに拗ねた表情をした玲生さんは、私の手首を掴む。


「円香は、俺のだから。たとえ母さんでも、絶対に渡さない」
「はいはい。玲生も子供だねー」


希実さんが私から離れながら、からかうように言った。
そのせいで、玲生さんはさらにふてくされてしまった。


「でも、うちに三人も暮らせる余裕、ないよ?」
「少しずつ部屋の改造しようかと思ってたんだけど」


希実さんは腕を組んで首を捻っている。


「それでどうにかなるものかなあ……」