君への愛は嘘で紡ぐ

包丁の持ち方から、食材の切り方を一から丁寧に教えてもらった。


私がどれだけ失敗しても、奈子さんは嫌な顔をしたり、怒ったりすることはなかった。


そして今日、ようやく奈子さんの手が加わっていない、私一人で一品作ることができた。


野菜炒めという簡単なものだが、それでも達成感があった。


それを小さな弁当箱に入れ、病院に持っていく。


玲生さんは相変わらず休憩室でほかの入院患者と話していた。


「こんにちは」


私が挨拶をすると、そこにいるほとんどの人が挨拶を返してくれる。


毎日のように玲生さんのお見舞いに来ているからか、みんな私にも優しく接してくれる。


「レオ君が羨ましい」
「彼女がお見舞いに来てくれるなんて、そんな幸せなことはないよなあ」


その言葉で、周りに私たちの関係がどう思われているかは簡単にわかる。


玲生さんはそれを聞いて、自慢げに笑っている。
するとみんなはますます玲生さんをからかう。


「松井さん、検査の時間ですよ」


看護師が一人を呼ぶと、それをきっかけにするように、解散し始めた。


「俺たちも病室に行こう」


玲生さんが手を差し出すと、私は自分の手を重ねる。
緊張は常にしているが、もう、手を繋いで歩くことに抵抗はない。