「笠木さんが……友達の親の金で手術はしたくない、と……」


怒られているという気持ちからか、声が震える。


お父様はもう一度ため息をついた。


「本人と直接話したほうが早いな」


驚いて口を開けたが、私の声は音にならなかった。
お父様が笠木さんに会うと言ったことに動揺して、頭が回らない。


「柳、田崎に予定を調整するよう伝えておいてくれ」


私が固まっていたら、お父様は箸を手にして黙って立っている柳に言った。


田崎さんはお父様の秘書だ。


「……かしこまりました」


その指示に従うことが嫌だったのか、顔を顰めながら返答した。
料理をつついているお父様には見えていないが、私からははっきりと見えた。


結婚に一番反対しているのは、柳かもしれない。


そんなことを思いながら、用意されている朝ごはんを食べた。





お父様が笠木さんに話を聞きに行く時間を田崎さんに聞き、その時間に合わせて病院に行った。


今日は希実さんが来ていたらしく、非常に気まずい空気になつている。


「えっと……円香ちゃん、この方は……?」
「円香の父です」


私が答えるよりも先にお父様が答え、頭を下げた。
それにつられるように、希実さんもお辞儀をした。