私が呼んだことで、笠木さんは視線を上げる。


やっと、目が合った。
たったそれだけなのに、私は胸をなでおろした。


あのままでは、笠木さんがどこか遠くに行ってしまうのではないかと思った。


私の顔を見た笠木さんは、苦笑している。


「そんな不安そうな顔するなよ」


そう言われても、笠木さんがつらそうにしていれば、私だってつらい。
泣きたくなる。


それが伝わったのか、笠木さんは私の頭を撫でて安心させようとしてくれた。


「ちゃんと最後まで聞け?」


小さく頷く。
笠木さんは安堵のため息を零した。


それからまた手を重ね、お互いに目を合わせた。


不思議と、時間の流れが遅いように感じる。


「こうして隣にいてくれるから、俺は生きたいと思った。もっと長い時間がほしいと思った」


笠木さんは私の手を握った。
心臓の音がうるさくなっていく。


「これからもずっと、俺の隣で笑っていてほしいって思う」


目頭が熱くなる。


「だから……結婚しようか、円香」


笠木さんは強く手を握っているが、耳を赤くして私から顔を背けている。


「はい……!」


私は泣きながら笠木さんに抱きついた。
笠木さんは宥めるように、私の頭を撫でていた。