君への愛は嘘で紡ぐ

笠木さんの手には力が入っていなかったのか、少し顔を動かしただけなのに、手が離れた。


鈴原さんと話したときの空気を引きずってしまい、私たちの間に沈黙が訪れる。


だが、私はそれをすぐに破った。


「……笠木さん」
「ん?」


名前を呼ぶと、とても柔らかい、眠そうな声が返ってきた。


「手術、してください」


断られるとわかっていることで、弱気になっているのが声に現れた。
予測できても、反応が怖くて笠木さんの顔が見れない。


「……なんで?」


肯定でも否定でもなかった。
顔を上げると、笠木さんは切なそうに笑っている。


私が言おうとしていることをわかっていて、聞き返してきたのかもしれない。
私が素直に伝えることで、笠木さんをさらに苦しめてしまうかもしれない。


それでも、言わなければ後悔するような気がした。


「笠木さんと、もっとずっと一緒にいたいからです」


笠木さんはそのまま後ろに倒れた。


「……だよなあ」


両腕で顔を隠しているから、なにを思って言ったのかはわからない。


だけど、やっぱり困らせてしまった。
そう思うと、言わなければよかったとも思う。


「こうやって一緒にいるようになって、もっと生きたいって思うようになっちゃったんだよなあ」