君への愛は嘘で紡ぐ

「彼ではお義父さんの会社を大きくすることだってできませんよ」


いや、理解した。


私は立ち上がり、力の限り鈴原さんを押す。
鈴原さんは後ろによろける。


鈴原さんは何が起こったのかわからないというような表情をしている。


「私の幸せは、父の会社を大きくすることや、政略結婚では、得られません！」


大声を出して、すぐにここが病院であることを思い出した。


自分を落ち着かせるために、深呼吸を一つした。


「私は笠木さんとの未来を選びます。鈴原さんとは、結婚しません」


すると、後ろから左手首を掴まれ、私はベッドに座らされた。
私の手を離すと、そのまま片手で私を抱きしめた。


「そういうことだから。帰れ、王子」


怒っているのかと思ってしまうほど、笠木さんの声は低かった。
鈴原さんは納得していないように見えたが、病室を出ていった。


乱暴にドアを閉めたのか、大きな音が後ろから聞こえる。


「怖い奴だなあ」


かつて不良だと言われていた笠木さんが言うのがなんだかおかしくて、笑ってしまった。


すると、笠木さんは私を抱きしめていた左手で私の頬を挟んだ。


「お前が言うなって思った？」


右側から顔を覗かせてきた。
顔が近すぎて、目を逸らす。