君への愛は嘘で紡ぐ

「彼は生きる気がない人間ですよ?そんな人と一緒にいて、傷付くことは目に見えてます」


そんなことはわかっている。
わかっていて、私は笠木さんと過ごすことを選んだ。


「僕なら円香さんを幸せにできる」


鈴原さんは、はっきりと言い切った。


正直、その自信がどこから来るのかわからない。
あれだけ私を見張るようなことをし、自由を奪っておいて、どうやって私を幸せにするというのだろう。


「……無理ですよ」


鈴原さんに対して恐怖心を抱いていたはずなのに、いつの間にかそれは薄れていた。
私が口を開いたからか、笠木さんは手を止めた。


私はゆっくりと振り向き、鈴原さんの目を真っ直ぐに見る。
少し睨まれているような気がするが、不思議と怖くなかった。


「私は、笠木さんといるときが一番幸せですから」


鈴原さんの顔が歪んでいく。
恐怖が蘇り、私はつい顔を逸らしてしまった。
そのせいか、鈴原さんは私の前まで来た。


顔を上げてみると、鈴原さんは鬼の形相をしている。


「今が幸せでも、彼との未来はないんですよ?結婚だってできません。そんな一瞬の幸せのために、長い幸せを捨てる気ですか」


なぜ折れないのか。
一ミリも理解できない。


呆れて言葉も出ない。