君への愛は嘘で紡ぐ

「三つ編みか……いや、それはできるか怪しい……あえて後ろで一つに束ねるか?」


ずっと触りながら考えている。
笠木さんが真剣に考えれば考えるほど、面白くなって、不思議と緊張がほぐれていった。


「円香さん、ヘアゴムって持ってるか?」
「はい、ありますよ」


床に置いていた鞄を取ろうと頭を下げると、毛先が笠木さんの手からすり抜けていくのがわかった。


逃げたわけではないのに、申し訳ない気分になる。


化粧ポーチの中から黒いヘアゴムを取り出し、笠木さんに渡すと、またすぐに元の位置に戻った。


すると、後ろから小さく笑い声が聞こえてきた。
振り向くと、笠木さんが声を殺して笑っている。


「そんなに俺に髪結んで欲しいんだ?」


図星だが、冷静に考えると子供のようで、急に自分がしたことを恥ずかしく思った。


「冗談だよ。そんな怒らなくても」


私が黙り込んだことを拗ねているのだと勘違いしたらしく、頭を数回優しく叩かれた。


「……怒っていませんよ。笠木さんに結んで欲しいと思っているのは、事実なので」


少し素直に言っただけなのに、顔から火が出そうだ。


「それはよかった」


そして笠木さんは私のヘアアレンジを再開した。