君への愛は嘘で紡ぐ

笠木さんは苦笑すると、じっと胸元まで伸びたストレートの髪を見つめてきた。


「ところで円香さん、ヘアアレンジしてみてもいい?」


私の髪に向けて静かに手を伸ばしてきた。


その手からは逃げず、目を閉じて笠木さんに触れられるのを待つ。


「柔らかいな……さらさらだし」


毛先まで神経が通っているのではないかと思うほど、笠木さんが触れるところから全身に緊張が広がる。


「円香さん、反対向いて」


笠木さんに言われるがまま、体の向きを変えた。
笠木さんが私に近付くことで、ベッドの軋む音がする。


優しく私の髪に指が通る。


「笠木さん、ヘアアレンジなんてできるのですか?」


ただ笠木さんに髪を触られるだけの無言の空間に耐えられなくなり、震える声で聞いた。


「できるんじゃない?」
「……適当ですね」
「そりゃまあ、やったことないし。わかんないよ」


そう言いながらも、手を止める様子はない。


誰かに髪を結んでもらうことは慣れているはずなのに、肩に力が入っていく。


「やっぱりふわふわみたいな感じがいいけど……綺麗なストレートだし、無理だな」


独り言なのか、小声で言いながらいろんな髪型を試しているように思う。