君への愛は嘘で紡ぐ

瑞希さんは拳に変わった右手を降ろし、腕を組んだ。
そして一人で納得し、頷いている。


「とりあえず、えんも笠木と過ごせる時間を楽しんでみたら?」


私が抱えていた悩みの解決策を提案してくれた。
瑞希さんは冗談を言っているようには見えない。


「……いいんでしょうか。楽しんでも」
「えんは笑ってたらいいんだよ。それが笠木を元気付けるかもしれない」


瑞希さんは断言しなかった。
だけど、間違っているとは思えなかった。


笠木さんと過ごした時間は、本当に楽しかった。
笠木さんも楽しんでくれていたように思う。


しかしながら、瑞希さんのアドバイス通り、笑顔で過ごしたい気持ちはあるが、心から笑える自信はなかった。


きっとまた、今日と同じことで苦しむ。


笠木さんが生きたくないと言っていることを思い出して、胸が張り裂けそうになるだろう。


私に、耐えられるだろうか。


「あー……余計悩ませた?」


私が口を噤んだせいで、瑞希さんはつらそうな表情をした。


「……いえ」


他人に相談して答えをもらっても、受け入れられないのは私の悪い癖だ。
同じことで悩み続けていては、前に進めるはずがない。


「ありがとうございます、瑞希さん」