君への愛は嘘で紡ぐ

私が立ち上がろうとすると、瑞希さんが手を差し伸べてくれた。
その手を取り、二人で立ち上がる。


だが、瑞希さんと視線が合わない。
瑞希さんは私の奥を見ているようで、振り返ってみる。
そこにはネームプレートがあり、笠木さんの名前だけが記されている。


「笠木のお見舞い?」
「……はい」


出てきた声は、自分でも驚くほど小さかった。
瑞希さんはさらに心配そうに私を見る。


「笠木といい雰囲気になれたんじゃないの?どうしてそんな落ち込んだ声なわけ?」


戸惑う以外にない。


いい雰囲気だったのかはわからないが、どうして瑞希さんが知っているのか、不思議でならない。


「なんで?って顔してる」


顔に出ていたことを恥ずかしく思い、両手を頬に当て、目を逸らす。


「母さんに聞いたんだよ。笠木がめちゃくちゃ幸せそうな顔してえんのこと話してたって」


瑞希さんが笑いながら教えてくれる。


笠木さんと直接話していなくても、体温が上がることがあるらしい。


そしてまたすぐに気分が落ちてしまった。


「……話、聞こうか?」


私の異変に気付いてくれた瑞希さんは、そっと私の肩に触れた。
私はその手に甘え、初めに笠木さんと話していた休憩所に移動した。