君への愛は嘘で紡ぐ

何か呆れられるようなことをしてしまったのかと、不安になる。


「純粋すぎってのも怖いと思わない?汐里さん」


汐里先生は困ったように笑う。


「まあいいや」


汐里先生の方を向いていた笠木さんは、また私の方を見た。


「もう一個お嬢様にしてほしいことがあるんだよね」
「私に出来ることでしたら、協力します」


笠木さんは一瞬私を疑うような顔をしたけど、すぐに嬉しそうに頬を赤らめた。


「あのさ、笠木さんじゃなくて、名前呼んでよ」
「……名前、ですか……?」


そんなことでいいのかと、拍子抜けしてしまう。


「あれ、もしかして俺の名前知らない?」


私が黙ってしまったせいで、笠木さんは少し悲しそうな顔で見上げてきた。


「いえ、知ってますよ。ただ……」


その先がはっきり口にできず、俯く。


ただ、恥ずかしいだけだ。


すると、シャッター音が聞こえた。
顔を上げると、笠木さんが私にスマホを向けている。


「何を……」
「照れてるお嬢様を写真に収めておかないとって思って」


私はカメラに向けて手を伸ばす。


「そんな、やめてください」
「可愛いんだから、いいじゃん」


そう言われて、一瞬手を縮めてしまった。