君への愛は嘘で紡ぐ

「待った」


だけど、笠木さんに腕を掴まれてしまった。


「……まさか、やる気があるのならやってみろとでも言うつもりですか?笠木さん、すぐに意見を変えすぎですよ」


図星だったのか、笠木さんは私から目をそらす。


「うるさい。俺の中でいろいろ戦ってんだよ。お嬢様を悪い方に行かせちゃいけない。だけど、やりたいと思っていることを我慢させたくない。でも、相手はお嬢様で……って感じで」


笠木さんに言葉をかけようとしたら、私たちが注文した品が用意された。
私は席に戻る。


すぐあとに笠木さんがそれらを運んできてくれた。


「円香ちゃん、笠木くんとなに話してたの?」


由実さんはサイダーを一口飲んで、聞いてきた。


笠木さんが運んだチョコレートケーキにフォークを入れる。


「アルバイトをしてみたいと、お伝えしました」


思ったより小さくなったケーキを口に入れようとしたとき、瑞希さんのため息が聞こえた。


「えん……笠木を好きになってから、おかしくなってるよ」


由実さんもそう思っているのか、私と目を合わせてくれない。


「校則は守るもの。笠木の真似ばかりするのはよくない」


校則が守るべきものであることは知っている。