君への愛は嘘で紡ぐ

瑞希さんは座り直し、不機嫌そうに働く笠木さんの背中を睨む。


「心配して損した。気分悪い」
「でも、私たちが一方的に病気かどうか聞いて、結局答えてもらわなかったし……私たちが勘違いしてただけじゃん。八つ当たりはよくない」


由実さんに諭され、瑞希さんはゆっくり息を吐き出した。


「注文しよう。あいつを困らせてやろう」


瑞希さんは笠木さんを呼び、メニュー表を開いた。


そして聞き取れないスピードで注文をした。


「りんごジュースにオレンジジュース。ショートケーキ、チョコケーキ、フルーツタルト。あとはたまごサンド。……全部一人で食う気か?」


瑞希さんの表情を見ていたら、笠木さんが正しく聞き取ったということがわかる。


「私の自由でしょ」
「じゃあ、金は?」


あの量の注文をすれば、それなりの値段になるだろう。
瑞希さんは目を泳がせる。


「私がお支払いしますよ?」
「えんはまたそういうことを言う……使い方考えろって言ったの、もう忘れたの?」


そんなわけない。
ここに来るまでずっと、その言葉に悩まされたのだから、忘れるはずがない。


「……りんごとフルーツタルトだけでいい」


瑞希さんの注文をメモすると、笠木さんは私たちのほうを見た。