君への愛は嘘で紡ぐ

学校でと言われると、いないだろう。


私と由実さんは首を横に振る。


「だよね。てことは、私たちが言わなかったら、笠木は辞めなくてもいいという……」


耳を疑った。


「意外」


由実さんに先に言われてしまい、私はただ頷く。


「瑞希なら笠木くんのことなんか考えずに、先生に言うのかと思った」
「……だって」


瑞希さんは目を伏せる。
落ち込んでいるように見え、心配になる。


「笠木、病気かもしれないんでしょ?家系厳しいのかもとか思ったら……言えないじゃん」


瑞希さんなりの気遣いだったらしい。
由実さんも俯いている。


だけど、それは誤解だ。


「あの……笠木さん、病気ではないそうですよ」


恐る恐る教えると、二人は目を丸くした。


「それ、本当?」
「はい。本人に確認しましたので、間違いありません」


机の上に置かれている瑞希さんの拳が強く握られる。


「あの野郎……!」
「ほかの客の迷惑だ。騒ぐなら帰れ」


タイミング瑞希さんのよく後ろを通った笠木さんが小声で言った。
瑞希さんは立ち上がって笠木さんと睨み合う。


「邪魔」


だけど、瑞希さんは一蹴されてしまった。
実際、笠木さんはドリンクを運んでいて、それは仕事の邪魔だという意味だったのだろう。