終着駅は愛する彼の腕の中


「誤認逮捕は時としてあるけど、それは必ず報道してきた。だけど乳児殺害事件だけは、公表されなかった。犯人は釈放されたけど、無罪の報道はされなかった。その事が許せなかったから、僕は警察官を辞めたんだ」

「・・・じゃあ、初めから私の事知っていたの? 」

「いや、そうじゃないけど。僕は乳児殺害で、逮捕されてきた犯人の事。ずっと、忘れられなかったから。ノエリを見た時、どこかで会ったことがあるとは思ったよ。でも確信が持てなかった。ただ・・・見ていると、胸が熱くてとっても幸せな気持ちになれるから。・・・確信したのは、ノエリが言ったからだよ」

「そう・・・ばらしたのは、結局私か・・・」

「でも、それだって嘘じゃないか。本当は、無実なのに嫌われる為にそんな事言っだけでしょう? 」


 ノエリはフッと笑った。


「・・・あんたと私では、住む世界が違いすぎる。・・・私は安いボロアパートで、その日を生きるか死ぬかの生活している。・・・だから・・・もう・・・終わりにしてよ」

「どうして? 」

「これ以上。惨めになりたくないから・・・」

 ノエリはシレっと答えた。


「そうか。ノエリがそこまで言うなら、そうするしかないね」

 
 ノエリはそっと背を向けた。


「一度だったけど・・・有難う・・・」

 小さな声でノエリが言った。



 羽弥斗は何も答えなかった。



 そのまま何も言わずに、ノエリは去って行った。


 追いかけたい気持ちはあった羽弥斗だが、その場に佇んで動けなかった。




 早杉家をでたノエリは、もう一度振り向いて家を見た。


 フッと微笑んで、そのまま歩いて行くノエリ。




 それっきり、羽弥斗とノエリは会う事がなかった。



 ノエリは住んでいたアパートを引き払い、どこかに引っ越してしまった。

 また夜の繁華街にもどったのかと思われたが、戻ってはいなかった。