「悪」が似合わない君と。




「…そっか。羨ましいな、龍堂くん。君にそんなに思ってもらえるなんて」


「片想いだけどね」


…トンボ…


「そんなしっかりフられちゃえばね。」


「でも気持ちはほんとに嬉しかったよ。ありがとう武内君」


…トンボ…


まだ胸がざわざわしてる


トンボが俺を好き


それだけでもういっぱいいっぱいになるってのに…


『リュードーさんほど『悪』が似合わない人はいないよ』


思い出すだけで胸がギュッとなる


あーまじで今すぐ抱きしめたい


こんな漫画みたいなくっさいこと思うなんてヤバいな俺


でも今なら共感できるな…




「でも篠瀬さんさっき、4組の浜田くんに抱きかかえられてたよね。もしかしてあの人も僕と一緒?」


呑気なこと考えてた俺の耳にすっごい虫が這ったようなデス情報


…は?


抱きかかえる?


浜田が?トンボを?


……チッ


…あの馬鹿野郎


あとでぶっとばす



「…モテモテだね篠瀬さん」


「私がモテたいのは一人だけだけどね」


ん"っ

不覚にも今の一言に噂の胸キュンしたとか腐っても言えねぇな


しばらくして武内の諦めたような渇いた笑いが聞こえた


「じゃ、すっきりしたから僕はいくよ。篠瀬さん…ありがとう」


「こちらこそ。ありがとう」


「じゃ、じゃあね。また明日」


「うん」


武内の声が近づいて…き、あ。


やば


これここにいたらやばいや…つ


ガラッ


「!」





武内と目が合う








沈黙


座っている俺を見下ろす感じになっている武内も目を見開いて動かない


え、えっと…なんて言えば


すると武内は俺を見ていた目を少し鋭くして口元はニヤッと笑った


そして


『目』


と、自分の目を指差しながら口パクで言った


…あ。


そういやまだ…


目元に触れると結構しっかり濡れてる


え、あ


うわっ!


は?泣き顔見られた!?


うわっ最悪!


よりにもよって恋敵だぞ


はああああ


焦って顔を隠したのがわかったのか

武内はクスッと笑って帰っていった



うーわ

なにあいつムカつくけどかっこいいな



武内のおかげか、さっきよりもだいぶ気が引き締まった


目元をぐいっと拭き、立ち上がる


深呼吸をして扉に手をかける