「悪」が似合わない君と。




「でも…さ。」


武内の弱々しい声が聞こえた


「龍堂君は言ったら悪いけど、あんまりいい噂ないよね。僕たちにとっての普通の生活もしてない
喧嘩沙汰もたくさんあるって聞いたし。悪名も高いみたいだし…もしかしたら君が傷つくことになるかもよ」





「僕だったらそんなことさせない…篠瀬さんを大事にするし、幸せにできるよ」


ああ…そうだ…

武内の言ってることは正しい


俺がお前といると危険かもしれない

安全とは言い切れない

自分でもわかってる


望んでなかったとしても今の地位を手に入れてしまった


『悪いやつ』

俺にはそのレッテルが永遠に付き纏う


俺じゃトンボを傷つける日が来るかもしれない

今だってトンボの背中にはきっと傷があるんだ


俺はトンボと…一緒にいる資格なんてあるんだろうか

上がっていた顔が沈んでいく


「ありがとう…でもね。」


トンボの優しい声が聞こえた


「リュードーさんはそんな人じゃないよ。」


…っ


「喧嘩も多いし、危険なこともたくさんあったけど

本当はとっても優しくて

ただ単に不器用なだけで

甘いものが好きで

心が広くって

そのどれもが愛おしいって思うには十分で

確かに悪名は高いかもしれないけどね」


……


「リュードーさんほど…『悪』が似合わない人はいないよ」



っ…


あ、やばいこれ

気がついたら頬を伝う何か…


まじで?おれ…


この年にもなって…


喧嘩早い男のくせに?…


涙流すなんて…



あいつは…俺を束縛していたものを簡単に解いたみたいだった


変なものに悩まされた俺を…


たった一言で…




「だから私は、龍堂彗が好きなの」




ほんとに勘弁してくれトンボ…


これ以上お前を好きになってどうするんだ…


愛しいのはどっちだよ


もう…好きすぎて辛い


もう一雫、慣れない水が目から落ちた