「悪」が似合わない君と。




「…ごめんなさい」


少し間を置いてトンボの声が聞こえた


この言葉に安心したのも束の間


「私、好きな人がいるの」





次の返答に息を呑んだ



そうか…考えたこともなかったな


トンボの気持ち…


好きな人…か


それが俺だったらなんて考えるのは…都合がいいだろうか…


でももし違うんだったらあのキスはなんだったんだって言ってやりたくなる


トンボの心を占めるのが俺であってほしいと思う…



「…私も言わなきゃって思ってるんだけど…なかなか言い出せなくて。今その人を待ってるの」


…待ってる?


トンボが待ってるのって…


思わず顔を上げた


「もしかして…龍堂彗くん?」





…漏れそうになる声を抑えた


トンボの声は聞こえない


何か意思表示をしているんだろうか…


俺の心臓は今までにないくらいうるさい



「そう…なんだ」


「うん」


どれくらい時間がたっただろう


そんな声が聞こえた…


力が抜け思わずその場に座り込む