「篠瀬さん」
急に意を決したような力強い武内くんの声にちょっと驚いた
「どうしたの?」
なんかこの感じ…さっきもあったような
「僕…篠瀬さんのこと、好きです。」
…へ?
「女の子として…惹かれてる」
振り絞るような声
お、女の子として…
武内くんが…私を?
好き…
「付き合ってくれないかな」
武内くんは少し震えていた…
長い睫毛の綺麗な目が私を捉えている
真剣に伝えてくれたんだろうなってすぐに伝わる
その姿を見ると少し胸が痛い
武内くんのことは好きだけど
そういう好きではない
浜田さんやカイさんにもちゃんと言わなきゃって思ってるんだけど、なかなか言い出せない弱い私
でも、ここではぐらかしたら…武内くんに失礼だ
私の気持ちは変わることはないから…
「…ごめんなさい」
…
「私、好きな人がいるの」
少し間を置いて武内くんのいつもの声が聞こえた
「…そうなの?」
「うん…私も言わなきゃって思ってるんだけど…なかなか言い出せなくて。今その人を待ってるの。
だからごめん。武内くんの気持ちには答えられない」
しんとする
外の雑音だけが聞こえる
しばらくして武内くんが沈黙を破った
「もしかして…龍堂彗くん?」
!!
な、わかるんだ…
もしかして分かりやすかったのかな私
でも嘘をつく必要はない
こくんとうなずいた
「そう…なんだ」
「うん」
武内くんは一度目を泳がせ再び私を見た
「でも…さ。龍堂君は言ったら悪いけど、あんまりいい噂ないよね。僕たちにとっての普通の生活もしてない
喧嘩沙汰もたくさんあるって聞いたし。悪名も高いみたいだし…もしかしたら君が傷つくことになるかもよ」
…それは
「僕だったらそんなことさせない…篠瀬さんを大事にするし幸せにできる」
…確かに武内くんの言っていることは間違ってない
リュードーさんと私とは全然違うし、きっと穏便に生活するのは難しいかもしれない
それでも、それで諦められるほど、この気持ちは小さくないんだ
「ありがとう…でもね。
リュードーさんはそんな人じゃないよ。
喧嘩も多いし、危険なこともたくさんあったけど
本当はとっても優しくて
ただ単に不器用なだけで
甘いものが好きで
心が広くって
そのどれもが愛おしいって思うには十分で
確かに悪名は高いかもしれないけどね
リュードーさんほど…『悪』が似合わない人はいないよ」
リュードーさんを思い出すだけでドキドキして、胸が痛くて、それで
とても暖かくなる
「だから私は、龍堂彗が好きなの」


